古典漬け
(新春モードの国立劇場)
今回の上京は有給休暇を取ったのでちょっと長めでした。
でもそのほとんどは「浦安別宅」のお片づけに忙殺……
この不景気にいつまでも別宅を維持するわけにはいかないので、そろそろ撤収しなければならないのだけど、それにはここにあるモノを少なくとも半分くらいは処分しないとどうしようもない。
でも当節モノを処分するのにもお金かかるのよね~。
しかし今回はゆっくり滞在のおかげで、特に前半古典にどっぷりつかってきました。
まず一日目は国立小劇場で開催された
国立劇場おきなわ会場5周年記念の公演で、第一部が琉球舞踊(稲まづん・本貫花・湊くり節・浜千鳥・加那よー天川・しょんだう) 、第二部が新作組踊「真珠道(まだまみち)」という構成。
これがスゴかったのなんのって……
なにしろ沖縄で公開オーディションして選抜された若手による公演、というだけあって、若さと技量を兼ね備えた踊り手ばかり。レベルが高い。
最初の「
稲まづん」は新人賞の課題曲としてさんざん稽古した曲だけど、踊りをナマで見るのは初めて。なるほどこんな格調高い踊りだったのねーと感心する一方、地謡が安冨祖流なので節回しがあちこち違っており、時々違和感感じる部分も……まぁ流派違うんだから仕方ないけど(笑)。
面白かったのは「
しょんどう」。これまた関東ではなかなか上演されない演目で、2人の「ちゅらかーぎ」と2人の「やなかーぎ」が組んで踊る。4人とも基本的には同じ振り付けなのだが、美女2人は優雅な手つきでいかにも琉球古典舞踊らしくしとやかに踊るのに対し、滑稽なお面をかぶった「やなかーぎ」2人はどこか調子っぱずれのがさつな踊り。その対比が面白い。
この踊りを見ていて思い出したのは漫画「陰陽師」に出てきた雅楽の「
安摩」なのだけど、踊りの作者がはたしてそれにヒントをもらったかどうかは……謎です。
第二部の組踊「真珠道」もよかったー。これについて語り始めると長くなりそうなので、これはまた日を改めて。
その翌日は川崎にて野村流音楽協会関東支部の弾き初め会。
例によって「かぎやで風」新年バージョンから始まって、きっちり数曲弾いてその後は宴会(笑)。まぁでもこれが楽しいんだけど。
この席で前日にも話題が出ていた「法政大学での琉球舞踊公演」の話を聞く。人間国宝の踊りがタダで見られる、という美味しい話なんだけど、往復はがきで申し込んで当選した人のみご招待。今さら無理じゃん、と思ったけど、今日の出席者の中にまだ同行者枠の余裕を持ってる人がいる、というので急遽頼み込んで一緒に連れてってもらうことに。
当初の予定では日曜の夜の新幹線で帰るつもりだったのに、ひょんなことから有給休暇がまとめて取れることになって28日帰宅に予定変更をしたんだけど、おかげでこんな美味しい話にもありつけた。
妙音弁才天様はまだわたしを見捨ててないらしい(笑)。
で、月曜日の夜は法政大学で「
琉球舞踊と能の至芸」の第一夜・琉舞篇を堪能させていただきました。
この日もまた見ごたえのある舞踊がてんこ盛り。
「
高平良万歳」なんて鳥肌モノでした。なにしろ難易度の高い踊りだから、関東でも師範クラスの方がひとりで踊るのは見たことがあるけれど、これを踊りきる技量の持ち主をふたり揃えるのは、内地ではちょっと難しい。だから隅々まで所作のピタリと決まった踊りを、それもふたりのシンクロで見られるなんて……
もちろん、人間国宝宮城能鳳先生の踊りはもう「素晴らしい」のひとこと。演目は「天川」と「諸屯」のふたつだったんだけど、最初の「
天川」なんて、出てきたとたん「う、美しい……」と思いましたね。
いやだって、70過ぎてるんですよ。確かに素顔はオジイというよりダンディーなオジサマだけど、それにしたって、遠目はもちろんオペラグラスでのぞいたって充分美しい。芸の力って偉大だわ。
「
諸屯」はまた、「至芸」という言葉がぴったりくる踊りだった。鼠色という紅型にしては渋い色合いの打ちかけをはおった下にのぞく真っ赤な胴衣(どぅじん)と真っ白な下袴(かかん)、という組み合わせがとっても艶めかしくて、「品格のある色気」ってこういうものか、と感嘆した。この踊りの衣装は紅型の打ちかけに帯を締める「前つぼり」という着付けにするところもあるけど、やっぱりこういうふうに着流しにしてほしいな。そのほうがより唄の雰囲気が出ると思う。
いや、いいもん見せてもらいました。少しでも自分の芸のこやしになればいいんだけど。
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