コン・ティキ
「
ライジング・ドラゴン」以来二か月ぶりの映画。今回は実際にあった冒険を描いた「
コン・ティキ」です。
「コンチキ号探検記」との出会いは古い。
子どもの頃「児童文学全集」で読んで以来、若き学者トール・ヘイエルダールが自分の仮説を証明しようと実験航海に乗り出してしまうその行動力、そのユーモアあふれる冒険の記録、そして豊かな海の描写にすっかり魅了されてしまい、長らく愛読書となった本。
大人になったわたしは仕事で北欧に行くというチャンスに恵まれ、週末を利用してオスロに行き、バスに揺られて(夏ならフェリーがある)ビグドイ半島の雪道をたどってはるばる「
コンチキ号博物館」を訪ねた。
実物の「コン・ティキ号」に対面したときは本当に感動したものです。すごくちっちゃかったけど(笑)。
さて、映画の感想ですが。
やっぱりあの何度も読んだ航海記が映像化された、という感動は大きかったです。筏そのものはオスロで見たとはいえ、実際に海に浮かんで揺られている姿はまた格別。航海にいろどりを添えてくれる様々な海の生き物の姿も、ここまでよく撮ったなぁと感心するばかりでした(もちろん部分的にCG使用)。
広い広い大海原にぽつりと浮かぶコン・ティキの姿をはるか上空からとらえた映像もすてき。
その一方で原作を読み込んでいるだけに、「あのシーンがないぞぉ」とか「メンバーのキャラが違う」とか、どうしたって不満も出てくるわけで……「探検記」はユーモラスな部分が多かったけれど、映画にはその裏で展開されていた(かもしれない)さまざまなシビアな現実や乗組員同士の確執も描かれ、若干ほろ苦い味付けになっています。
もちろん映画は映画としての完成度を求めるので、原作とは違う部分もたくさんあるでしょうが、ヘルマンの扱いは若干納得いかなかったなぁ。実際のヘルマンはれっきとしたエンジニアだったのに、映画では営業マンみたいに描かれ、なんかお荷物扱いされてたのが不満。
その一方、トール・ヘイエルダールがカナヅチだったという事実とか、探検の終わりに待ち受けていた運命(このあたりは実話だとか)にはかなり驚きました。えええ、知らなかった……
ペルー大統領との会見の様子とか、カニのヨハンネスとか原作通りに描かれてた部分もあって、そこは満足です。
航海に関してはほとんどシロウトの男5人が、昔の人たちのやり方をそのまま再現すればきっとうまくいく、という、冷静に考えればかなり無茶なトールの考えに賛同して海に乗り出していく姿とか、1947年という戦争の余韻がまだ残る時代の雰囲気とか、見どころはかなりある映画だと思います。
冒険って成功すれば賞賛の嵐だし失敗すれば非難の嵐……もちろん参加する人は覚悟の上で行くんでしょうけど、どっちに転んでも家族としては大迷惑。原作の「探検記」はトール視点で描かれているのであまりそういう面が見えてきませんが、映画だとトールの奥さんリヴの目を通して、ある意味「大人になっても少年のまま」の困ったちゃんであるトールの姿も垣間見られ、妻として子どもたちの母としてああいう決断を下さざるを得なかったんだろうなぁという、その気持ちもよくわかります。男のロマンには代償もつきものなんだよ。
昔から大好きな冒険話だったけど、最近の出来事考え合わせると若干複雑な心境になります。
とはいっても、個人的には楽しめました。トール役の俳優さん、後半はかなりむさ苦しくヒゲオヤジ化してたけど金髪碧眼のイケメンだったし、ジンベイザメはやっぱりデカい(笑)。
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