2013年09月29日

手水の縁

手水の縁

昨日、徳川美術館で開催された「国立劇場おきなわ第3回県外公演」に行ってきました。
琉球舞踊「若衆こてい節」「綛掛」「上り口説」、波照間永吉先生の講演、組踊「手水の縁」から忍びの場抜粋、という休憩を挟んで一時間半ほどのイベントでしたが、とても密度の濃いものでした。

今回は比較的時間があったので久々に着物で出撃。来月の沖縄芸能大会に向けて、少し「着物勘」も取り戻しておきたいし(今年の夏は浴衣着なかったし)。本当はまだ袷の季節じゃないのですが、紅型の帯締めたかったのでフライング。胴抜き仕立ての紬だからいいか~と思ったけど、やっぱりちょっと暑かった(笑)。

最初の琉球舞踊3演目はもちろん、波照間先生の講演も興味深いものでした。

波照間先生の第一声は、
「グスーヨ、チューウガナビラ」

この言葉、さまざまな沖縄系イベントで聞いているので私はごく普通に「皆様今日は」と脳内変換して聞いていたのですが、周囲の方々(結構年配の方が多かったような)が一様に「え?」という表情なのを見て、ああそういえばこれウチナーグチだったわ、と気が付いた(笑)。
もちろん波照間先生もそのあと沖縄語のあいさつの意味を標準語で解説し、そのあと同じあいさつを八重山言葉で繰り返してくれたけど、さすがにこっちは聞き取れなかったです。

さて、わたし的に一番面白かったのは最後の「手水の縁」。この組踊はまだ見たことがありません。
儒教的な忠孝思想の強い組踊の中にあって、この演目は世間のしがらみや親の意向を振り切って、若い二人が恋愛に突っ走ってしまう、ちょっと「ロミオとジュリエット」的色合いも持った異色作(そのため上演禁止だった時期もあるらしい)。

今回はその中でも一番の見どころである「忍びの場」。美少年「山戸(ヤマトゥ)」が募る恋心を抑えきれず、ヒロイン「玉津(タマチィ)」の家にしのんでいく場面です。上演前に司会者による解説があり、忍んでくるヤマトゥに「今ならOK」と合図しているのがタマチィの弾く箏「瀧落し」であること、それに応じて「今来たよ」と知らせるのがヤマトゥの吹く笛の調べであるとか、組踊の「お約束の所作」として、恋する二人が向き合ってお互いの肩に右手をかけるのが愛情表現であるとか、それを聞いてなるほど~!と思いました。

以前国立劇場おきなわの開場一周年記念で「組踊を聴く」という公演に行ったことがあるのですが、この時もこの場面の箏の独奏がありました。その時はいつもの三線の演奏に比べて「色っぽくて、しっとりしてて、いいなぁ」と思っていたのですが、ここの部分の箏の音にはそういう意味があったのですね。うわー知らなかった。


そして、恋する二人が出会った場面の「萌える」こと!!赤ハイビスカス

いや、常々、恋愛感情の表現ってのは、抑え気味のほうが「萌える」というのが持論でして(爆)。
西洋だったら時々映画に出てくるんですが、がばっと抱き合ったりキスしたり、というんじゃなくて、男性がやさしく女性の手を取ってその手の甲にキスをする、というのがいちばん萌える。ハート

でまた、この組踊の愛情表現が萌え全開なわけです。タマチィの箏の音を聴いてヤマトゥが笛を吹く。そして門のところに立ってタマチィに出ておいでと呼びかける、そのセリフに畳みかけるように

サアヤウ暮らさらん忍で来る 御門に出ぢみしようれ思ひ語ら

という地謡による仲風節の絶唱が入るのです。その間にタマチィが出てきてヤマトゥを見つけ、そして向かい合っておたがいの肩に手をかけながら片膝を立てて座り、見つめ合うのですが、この、当人たちはただ黙って見つめ合ってるだけで、その心の叫び(?)を歌三線が代弁しているところがまた萌える。

この部分に限らず、だいたい組踊においては、登場人物のセリフのやり取りは決まった短いメロディ「♪黒ドミミミミミミファファ ファソソソファミドド」の繰り返しで、ぐーっと気持ちが盛り上がってきたアップ頂点で突然歌三線に切り替わってその思いが代弁される、という形になっていて、なんだか、普通にセリフとして思いのたけがのべられるより数倍ドキドキします。

それに、美しい紅型の着物を着たヤマトゥとタマチィが左右対称ポーズをとって向かい合うシーンは、一対のおひな様みたいで絵的にも美しい。やっぱりここは名場面だなぁと思いました。いつか全編通して見てみたい。司会者も「つづきはぜひおきなわ劇場で」と言ってたけど(笑)。

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Posted by 唯ねーねー at 23:51│Comments(1)OKINAWA
この記事へのコメント
地謡さんの声色、絶妙でしたね。さすがです。一気に物語の世界に引き込まれそうになりました。

> 恋愛感情の表現ってのは、抑え気味のほうが「萌える」
たしかに!
例えはちょっと違いますが、昔「ラストサムライ」見たとき、トムクルーズと小雪のキスシーンで「そ、それはないほうが、かえって気持ちが伝わってきて良かったのに〜」と思ったものです^^;

ところで、私は波照間先生のうちなーぐちご挨拶、八重山言葉で言ってくれた方が耳なじみがあったんです(ちょっと自分でも意外な発見でした^^;)。唯さんはやはり、うちなーぐちの方が聞き取れたのですね。ナルホド!
Posted by KAYOKO at 2013年10月03日 22:42
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