2016年06月12日

「上り口説」のあとを辿って

今年のゴールデンウィークは沖縄に行きました。
……まぁ沖縄行は珍しくもないんだけど、今回はずっと那覇ステイ。考えてみたら那覇っていつもどこかへ行くときの通過点で、連泊した記憶ってあまりない。
滞在一日目はバスツアーで伊江島に行ってゆり祭りを見て、二日目は無人島ナガンヌ島に行って海水浴。
三日目は、今までやってみたいと思っていたツアーをやってみました。

琉球古典に「上り口説 (ぬぶいくどぅち)」という有名な唄があります。首里を出発して那覇から船に乗り、奄美諸島、吐喝喇列島を通り過ぎて薩摩へと旅をするありさまをうたったもので、歌詞は8番まであるのですが、船に乗るまでで1番から5番まで費やして、6番でやっと出航、そのあとはあっという間に鹿児島に到着してしまいます。

この、港までの道中を一回歩いてみたいな、と思ってたのです。

まず最初は、たぶんツアー御一行様の集合場所でもあったんじゃないかと思う首里観音堂。唄はここから始まります。

ティントゥン テントゥン ティントゥン テントゥン
♪旅ぬ出じ立ち観音堂 千手観音伏し拝でぃ 黄金酌取てぃ 立別る(「上り口説」1番)

「上り口説」のあとを辿って

残念ながらゆいレールの駅からはかなりの距離があるし、バスでも乗り換えなしでは行けなさそうだし、ということで、タクシー使用。
到着したのは首里城へと向かう坂の途中にある、赤瓦のお堂でした。
おーほんとに千手観音だ、と感心しながらご本尊にお参りし、お寺の横に作られた休憩所からあたりの景色を眺めます。
ここは今回のツアーでは最高地点に位置し、ここから先は港まで下り坂。
ビルなんかなかった昔はきっと海まで一望できる、見晴らしのよい所だったんだろうなと思います。

観音堂を出て、ひたすら道を下ります。

袖に降る露押し払い 大道松原歩み行く……(「上り口説」2番)

「上り口説」のあとを辿って

下り坂なんで距離はあるけど割と楽ちん。逆コースだったら大変でしょうが……
やがてゆいレールの安里駅が見えてきます。
国際通りが突き当たる安里のT字路のあたりで右に入っていくと、奥のほうにひっそりと建つのは安里八幡宮

行きば八幡(「上り口説」2番)


「上り口説」のあとを辿って

とちゃんと唄にも出てきます。昔は歩く道から見えたのかな。
先ほど歩いていた道に戻ります。この辺りではもう「崇元寺通り」と呼ばれていますが、しばらく歩くと右手に現れるのが

崇元寺(「上り口説」2番)

の石門です。

「上り口説」のあとを辿って

今残っているのはこの石門だけ。寺の敷地は広場になっていて、この日はどこかの保育園の子供たちが保母さんに見守られながら遊んでいました。
崇元寺の前には川が流れていて、ここを渡るといよいよ那覇の街に入っていくわけですが、この先歩く道は、実は昔は「長虹堤」と呼ばれた海中道路でした。今でこそどーんと陸地になっている那覇の街、昔はそれこそ崇元寺の前あたりまで海が入り込んでいて、那覇の街の大部分はそこに浮かぶ島だったらしいのです。

今じゃどうってことない道になっていて、地図をじっくり見てたどらないとわかりませんが。
(この間NHKの「ブラタモリ」に取り上げられたのを見てたから大丈夫、と思ったけど、それでも道に迷いかけた)
あ、写真の奥に見える木立、昔は小島だったところです。

「上り口説」のあとを辿って

この「元長虹堤」をたどっていくと「沖映大通り」というちょっと広い道に出ます。そこはもうゆいレールの美栄橋駅。

美栄地高橋 打ち渡てぃ……(「上り口説」3番)
と唄に出てくる高橋も、多分この辺りにあったはず。

「上り口説」のあとを辿って

駅前の広場には「新修美栄橋碑(しんしゅうみえばしひ)」や案内板があります。
案内板の後ろの段差、「ブラタモリ」でも説明してましたが、これが海中道路の痕跡なんですね。

ここから先は大幅に地形が変わっているので昔の痕跡が辿れないし、朝から歩き詰めで疲れてきたしということで、美栄橋から旭橋までゆいレールでショートカット。ロワジールホテル那覇の裏手にある三重城(みーぐしく)まで歩きます。ここが今日のツアーのゴール地点。

又ん巡り逢う 御縁とぅてぃ 招く扇や三重城……(「上り口説」6番)

「上り口説」のあとを辿って

階段を上ったところに広がるのはあちこちに草がぼうぼうと茂る空き地。
昔はここから出航する船の安全を祈り、見送る場所でしたが、今ではすっかりまわりが埋め立てられ、第一印象は「DASH海岸?」

三重城というと思い出すのはもう一つの唄、「花風節」。

三重城に登てぃ 手巾(てぃさじ)持上ぎりば 速船のなれや 一目(ちゅみ)ど見ゆる

「上り口説」のあとを辿って

海を眺めていたら、こちらに向かってきた船の上をちょうど飛行機が横切っていきました。

朝からずっと歩いてきて、三重城までたどり着いたらちょうどお昼時。
あたりは港湾地区なのでホテルのほかにはめぼしいお店もないのですが、一軒だけ知る人ぞ知る食堂があります。、それが「波布食堂」。

港で働く労働者の皆さんをターゲットにしている食堂だけに、どのメニューも盛りが半端ない。
向かいの席の野菜炒め頼んだおばさんは、店の人にパックをもらって半分詰めて帰りました。
ここのメニューで有名なのは丼のそばが見えないほど野菜炒めが積み上げられた「肉そば」だけど、もう運ばれてるの見るだけで胸焼けしそうなボリュームだったので、わたしは「味噌汁」を頼みました。

「上り口説」のあとを辿って

これだって午前中首里から那覇まで歩いたから完食できたようなものです。
普段だったら絶対無理無理……(^^;



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Posted by 唯ねーねー at 15:49│Comments(0)OKINAWA
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